background Layer 1 background Layer 1 background Layer 1 background Layer 1 background Layer 1

各地で相次ぐ熊の出没──増える被害と、命を守るための新しい対策

最終更新日: 2025年11月03日
広告

近年、日本の山間部や地方都市を中心に熊の出没が相次いでいます。秋の行楽シーズンにもかかわらず、登山道や住宅地、通学路などで熊の姿が確認されるケースが増え、各地の自治体は警戒を強めています。ニュースでも「クマが住宅街に侵入」「畑を荒らす」といった報道が続いており、もはや“山の動物”だけの話ではなくなりつつあります。

こうした中で注目されているのが、スマートフォンを活用した「熊出没対策アプリ」です。位置情報をもとに危険エリアを把握し、出没情報を共有することで、人々の安全を守る新しいツールとして利用が広がっています。

スマホで熊の動きを把握──注目の対策アプリ

熊の出没は突発的に起こるため、最新情報をいかに早く知るかが命を守る鍵になります。現在、日本では複数のアプリがこうしたニーズに応える形で登場しています。

■ BowBear:市民が支えるリアルタイム情報網

BowBear icon
BowBear
旅行&地域
1.2
評価
100+
ダウンロード数
WISM
開発者
ダウンロード
BowBear image

全国の熊出没情報を地図上で確認できる「BowBear」は、一般ユーザーが投稿した目撃情報をもとに、どの地域で危険が高まっているかを可視化します。アプリはGPSと連動しており、ユーザーが危険エリアに近づくとアラート音で警告。さらに、熊が嫌うとされる猟犬の咆哮音を再生できる「威嚇機能」も備えています。ハイキングやドライブ時にも手軽に使えるため、山沿い地域に住む人やアウトドア愛好家の必携アプリとなっています。

Bears:自治体と住民をつなぐ防災ネットワーク

一方で「Bears」は、自治体向けのシステムとして注目されています。住民が熊を目撃した際にアプリから通報すると、その情報が行政に即座に届き、職員が現地確認や警告発信を行えます。これにより、従来よりも早く地域全体へ注意喚起を行うことが可能になり、「行政が受け取る情報」と「住民が知りたい情報」のギャップを埋めています。

■ Yahoo!防災速報アプリ:既存アプリを活かした地域連携

福井県では、「Yahoo!防災速報アプリ」を活用して熊出没情報を配信する取り組みを始めました。すでに多くの県民が利用している防災アプリをそのまま活かすことで、より多くの住民や観光客にリアルタイムで情報を届けられるようになっています。特別なアプリを新たに導入するよりも、既存の基盤を活用した現実的な対策といえるでしょう。

アプリ利用の際に注意したいポイント

こうしたアプリは非常に有用ですが、情報の性質を正しく理解して使うことが大切です。特にユーザー投稿型のアプリでは、投稿から時間が経過していたり、誤報が含まれていたりすることもあります。そのため、自治体の公式発表や地元ニュースと併せて確認することが重要です。

また、アプリを「見るだけ」で終わらせず、日常の防災習慣に取り入れることも効果的です。外出前に危険地域をチェックし、音声アラート機能をオンにしておく、あるいは熊よけの鈴やスプレーを携帯するといった「事前準備」を意識することで、安全性が格段に高まります。

なぜ熊の出没が増えているのか──三つの背景

熊の出没が増えている原因は単純ではありません。自然環境の変化と人間社会の構造的な変化が複雑に絡み合っています。

① 食料不足と気候変動

第一の要因は、熊の主食であるドングリや山の実りが不作となる「食料事情の変化」です。猛暑や台風などの異常気象が続いた影響で、山の食べ物が減少。その結果、熊は冬眠前に必要な栄養を確保できず、人里に食料を求めて下りてくるようになりました。人間の生活圏に「食べ物がある」と学習した熊は、春以降も再び出没する可能性が高く、問題は一時的なものではありません。

② 個体数の増加

第二の要因は、熊の個体数そのものが増えていることです。1990年代後半には全国で約8,000頭と推定されていたツキノワグマの数は、現在では2万~5万頭にまで増えているとの見方もあります。生息数が増えれば、必然的に人間との遭遇リスクも高まり、結果として被害件数が増加します。

③ 過疎化と人手不足

第三の要因は、人間社会の変化です。過疎化や高齢化が進む中で、熊を追い払う人手が減少。耕作放棄地に残された果樹などが熊のエサ場となり、「集落依存型の熊」と呼ばれる個体が定着しています。こうした熊が都市部にまで進出する現象は“アーバンベア(都市型熊)”とも呼ばれ、人と野生動物の境界が曖昧になってきています。

テクノロジーと地域がつなぐ「共存の未来」

熊の出没増加は、単なる自然災害ではなく、人と自然が共に生きる社会の課題でもあります。今後は、行政・地域住民・テクノロジーの三位一体の取り組みが不可欠です。BowBearやBearsのようなアプリを通じて地域の情報を共有し、Yahoo!防災速報のような既存の仕組みを活かして迅速に発信する──そうした取り組みが、被害を最小限に抑える鍵となるでしょう。

私たち一人ひとりが情報を受け取るだけでなく、発信者としても関わる意識を持つこと。それが、熊との不幸な遭遇を減らし、安全で安心な暮らしを守る第一歩です。

広告